【8091】水産専門商社のニチモウはPBR1倍達成に向けて株価上昇と増配を期待したい!
今回はニチモウ(8091)をご紹介します。
あまり聞きなじみがないかもしれません(私も銘柄保有するまで知りませんでした)が、実は創立100年以上の企業であり、1910年に漁網会社としてスタートしています。現在は水産専門商社として、様々な事業を展開しています。
そんなニチモウについて、私なりにまとめてみました。
- PBR1倍になるまでは強気
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株価が取得単価以下になれば買い増しして、取得単価を下げ、配当利回りを高めていきたい。PBR1倍に向けて株価上昇想定なので、買い増しする=PBR1倍から離れていっている点は注意。
- 1800円のラインを割って下落する場合、損切りを検討
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直近の株価反発のラインだった1800円を目安として、そのラインを突き抜けるならば、配当利回りより株価下落による損失の方が大きいと判断。
事業内容
ニチモウの事業は大きく4つに分かれています。
- 食品事業
世界中の漁場から水産物を調達し、高付加価値な製品に加工して、自社製品及び外食店企業向けなどに提供。 - 海洋事業
漁具・漁網や海上機械、漁業に関するノウハウを提供。また、海域の環境保護に配慮した機資材の研究開発も実施。 - 機械事業
食品製造工場にて必要な加工機械、製造設備を提供すると共に、ユーザに最適な生産システムの提案を実施。 - 資材事業
包装資材や除菌剤をはじめとする衛生資材などを取り扱っており、水産業にとどまらない商社事業を展開。
食品事業
売上高の約6割を占めるのが食品事業です。すり身やカニ、ホタテなど様々な水産物を扱っています。
世界中の漁場から買い付けた水産物を原料として提供することはもちろんですが、自社製品や外食チェーン店用、その他ニーズに合わせて加工して提供もしています。
個人消費の停滞している中、拡大するインバウンド需要を取り込むことで売上高は堅調に推移している印象です。しかし、今後の物価高影響によるさらなる個人消費の停滞が生じる場合、2025年3月期見通しの87億円の目標に到達できない可能性もあります。
ニチモウの主力である食品事業の売上高が停滞することは株価の下落に大きく影響するため、今後も業績推移には注視する必要があります。
海洋事業
海洋事業では、養殖部門と漁具・漁網資材部門が大きな2柱となっています。
漁具・漁網資材部門では、船舶、魚種や海域など用途毎に様々な漁網を提供しており、漁獲効率の向上を目指しています。漁業だけでなく、メジャーリーグのスタジアムのバックネットや遊具・アスレチックのネットなどにも使用されています。
ニチモウHPで調べただけでも下記のような資材があって、研究開発の様子を動画で紹介されており、男心がくすぐられました。
- 破れや摩擦に強いUltra Crossネット(UCネット)
- 環境に配慮した生分解性ロープ ※モズクなどの養殖に使うと初期成長が早いとのこと(すご!)
- 水産資源調査用Larva Catcherネット(LCネット)
漁業に携わる人が減っている現状で、そのままだと売上減が想定されますが、漁業に縛られることなく様々なニーズに対応している点を評価したいです。
養殖部門では、養殖用いけすや機資材、飼料などの販売を行っています。
また、九州電力などと合弁会社「フィッシュファームみらい」を設立し、陸上養殖のサーモン「みらいサーモン」のブランド化を推進しており、2023年10月に初出荷、年間300t規模のプラントを完工しています。
現在は年間3000t規模の生産拡大に向けて計画を進めているとのことです。
みらいサーモンが年間3000t生産できたとして、どこまで収益につながるかまだ未知数ですが、サーモンの安定供給が可能となり、漁獲量が環境変動や様々な規制などに左右されなくなることで、売上高の安定が見込まれます。
機械事業
機械事業では、食品製造工場に必要な様々な加工機械、製造設備、工場建設や生産性向上のための設備提案を実施しています。近年の省エネ・省人化設備の需要の高まりに合わせて、売上高の拡大が期待できます。
また、M&Aに積極的な姿勢を示しており、海外販売力の強化を目指しています。
ユーザのニーズ合わせて、最適な製造システムの提案から、工場建設、設備導入まで一気通貫で対応できる点は評価できると考えています。
国内外の食品製造機器・工場需要を取り込むことができれば、導入時はもちろん、設備更改時にも需要を見込むことができ、安定的な収益基盤を構築することができます。
下図の通り、海外の漁業・養殖業生産量は増加傾向にあり、特に養殖業の増加幅が大きいです。ニチモウの養殖技術を今後、海外に拡大させることができれば、市場の拡大を相まって売上向上につながるのではと考えています。
世界の漁業・養殖業生産量の推移

資材事業
建材用・内外装向けのフィルムをはじめとする住宅や家具向け資材、トレーなどの包装資材や除菌剤のような衛生資材、土壌改良や肥料の農業用資材など幅広く展開してます。
原材料の価格高騰もある中で、製品価格を改定することで対応できていることから、売上高も堅調です。
海洋事業でご紹介した生分解性ロープなどの研究開発は資材事業にも利益をもたらすビジネスモデル構造となっているため、今後も技術力の向上に投資してほしいと思います。
今後の投資について決算説明会資料で触れられており、次回の中期経営計画では下記4つに投資を実施予定とあります。
- 陸上養殖の事業化
- バイオマス漁網の実用化
- M&A
- 社内システム開発
この中でも特にバイオマス漁網の実用化は資材事業にも関わる部分だと考えており、SDGsの観点からヒット商品になるシナリオが理想です。
実用化に向けて研究開発費をかけていくことになるかと思いますので、成果として利益を上げられる/あげられる見込みが立つかにアンテナを張りたいです。
銘柄情報
株価推移
2025年3月から過去10年間の株価は下図の通りとなっています。

2022年あたりから株価を伸ばしているのが分かります。これは、2022年3月期の業績予想を上方修正したことや60→80円へ増配(+33%)したことが背景にあると想定します。
その後、2022年3月期第2四半期決算説明資料にて、新中期経営計画(2023年3月期~)における株主還元について記載があり「段階的に配当性向30%へ引き上げること」が盛り込まれていたことが、その後の株価上昇に影響していると考えています。
現在は、1株2000円付近で推移しており、2025年3月時点でPER 6.26倍、PBR 0.56倍となっております。
PBRが1.00倍を割っているため「株価 < 1株当たり純資産」であり、割安株と言えます。
同社は決算説明会資料の中でこの点に記載しており、PBR1倍割れの改善に向けて積極的な姿勢です。
企業価値向上への取り組み

純資産が横ばいの前提で、仮にPBRが1.00倍まで改善した場合、株価は1.78倍になる計算です。ぜひとも達成に向けて推進してもらいたいです。
配当
前述した配当性向は現在も継続して30%以上を掲げており、累進配当政策を維持していることから株主還元に積極的な姿勢が見て取れます。
配当金の推移

2025年3月時点で1株当たり配当金90円、配当利回り4.61%となっています。
前述の通り、同社はPBR1倍以上達成のためにROEとPERの改善を掲げています。このうちROEについて考えてみます。計算式は「ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」であり、ROEの改善には純利益の拡大が必要です。
純利益が拡大すれば、1株当たり純利益は連動して増加します。
次に配当性向について考えてみます。計算式は「配当性向 = 1株当たり配当金 ÷ 1株当たり純利益 × 100」です。
すなわち、1株当たり純利益が増加したときに配当性向を30%以上にするということは1株当たり配当金を合わせて増加させなければ、維持できません。
この関係から、配当性向を維持しつつPBR1倍達成するには1株当たり配当金の増加が必要と考えることができ、PBRの改善、配当性向30%以上の維持によって、高配当利回りによる配当金と株価上昇による売買利益の両取りが狙える銘柄だと思います。
株主優待は2025年3月時点で設定されていません。
ただ、水産物を取り扱っていて自社商品もあること、みらいサーモンの知名度向上に向けて様々な取り組みを実施していることなどを考えると、将来的に「みらいサーモンで作った○○」のような株主優待とかできそうだなと勝手に想像しています。
所感
PBR1倍以上達成に伴う株価上昇及び増配を狙いたい
株主還元に積極的な姿勢が好印象で、高配当株を選好する私にとって購入したくなる銘柄です。
さらに、PBR1倍以上達成に向けて、株価上昇も期待でき、増配期待もあります。
現状でも高配当利回りのため、増配を待たなくても配当金目的で保有でき、長期的に株価上昇を待ちながら、中期的には配当金を享受する「1つで2つの楽しみ」がある銘柄だと思っています。
食品事業の今後は注視したい
個人消費の停滞、消費人口の減少、気候変動・地政学リスクなどによる漁獲量減少…能動的に解決することが難しいリスクが食品事業を取り巻いている状況です。
特に個人消費の停滞は水産物の価格下落、漁業関連資材の需要悪化など食品事業以外にも波及するため、大きな課題になります。
このため、売上高の主力事業である食品事業の動向は常に意識する必要があります。
おわりに
PBR1倍に向けて、積極的な株主還元を続ける限りは保有したいと思います。
進捗が悪い、目標を掲げるだけで具体的な施策がない場合、また配当性向・累進配当政策の改悪がある場合は売却を検討したいです。
ここまで記事を読んでいただきありがとうございます。
皆様の投資人生において、少しでも私のブログが役立つことを祈っております。